前にも、Googleブック検索と著作権者/出版社との対立の構図は、実は[図書館]がうしろにあることを記述した。
誤解をおそれずにいえば、
図書館が純粋に理想を実現すると、著作権者/出版社と対立する
こともあり得ることを、Googleは顕在化させたのではないだろうか。
実はもうひとつ重要なことがある。これは多くの読書好きの方なら気がつかれていることだと思うが、出版されている書籍には、入手できない空白時間がある(もちろん所蔵している図書館があれば、[借りる]ことはできても、手元に置くことはできない…という意味で)
それは
[絶版]〜[権利消失]の空白時間
絶版の定義が曖昧なので、[重版未定][出版社消滅]としてもいいかもしれない。
までの期間。作品を書かれた作家さんですら、どうしようもできない期間(著者としては出版したいのに、出版社が増刷してくれないと店頭にはならばないし、読者にも届かない)。
[権利消失]にはいってしまえば、我が国には『青空文庫 ( http://www.aozora.gr.jp )』という得難い存在が控えているのでひとつの安心材料があります。が、出版社はもう増刷りしない。店頭にも在庫は無い。古書店をくまなく探せばあるかもしれないけど…図書館を探せばあるかもしれないけど…確実に読者が入手できる手段は失われます。実はGoogle社はここを狙ってもいるのです。
残念ながら、日本の出版関連の団体は、この[空白時間]を埋めるための制度をつくってこなかった…ということも、今回のGoogleブック検索の和解案に対する《拒否》という行動にむすびついているのではないだろうか。
電子出版であれば、そもそも[重版未定]なんていうのは存在しません。
著作権が切れる著者の死後50年までは、販売し続けられるのです。
出版社一社では難しいことであっても、今回和解案を《拒否》したような出版社の団体であれば、この空白時間を埋めるための互助的な仕組みづくりはできるはずなのですが…残念ながら、そういう動きにはならないうちに、Google社が絶版図書に対する権利を主張するので…事が複雑になっちゃっている…。
例えばこの本。鶴書房盛光社による「SFベストセラーズ」のもの。同社が無くなってしまい、このシリーズはいまでも全てをそろえることはできない。もちろん筒井康隆氏や眉村卓氏の作品は、別の出版社から出版されているものもありますが、写真右にある「続・タイムトラベラー」石川透著は完全に絶版状態です。古書市場では手にはいるかもしれませんが…出版業界の中にはこういう図書が実に多いのも偽らざる事実であることを、出版業界および業界団体さんは認識すべきです。フィジカル(アナログ)世代ならば、初版などという版画かリトグラフの美術品のエディションナンバー的な価値を見いだすのかもしれませんが、デジタル世代には[それを手元で読めること]が何よりも大切(デジタル世代ではコピーの世代数は無意味ですから)。
※ここまで書いていて感じたのだが…あの大手印刷会社さんと書店さんと図書館流通会社さんと古書販売会社と…あのつながりは、何かすごいことを考えているんじゃないか…と、思い始めてきました。例えば…出版社が無くなってしまった古書や著者が無くなって50年経過していない古書…の[電子出版]ってどうなんだろう。古書店に[底本]が入ってくるかもしれないし…印刷会社さんといえども電子化はとっても得意な会社さんですから…う〜ん、おもしろいかも。誰かが既存のあり方に果敢に挑まないと何も変わらないんです。
平日は山中湖村の森の中にある図書館 山中湖情報創造館に、週末は清里高原の廃校になった小学校を活用したコワーキングスペースもある 八ヶ岳コモンズにいます。「わたしをかなえる居場所づくり」をイメージしながら、テレワークに加えて動画撮影やネット副業などにもチャレンジできる図書館/コワーキングスペースづくりに取り組んでいます。
コメント
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よく持ってますなぁ…僕も両方持ってますけど、今どこに埋まっているやら(汗)。 Like
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ボクも確か昔買ったはずなんですけど…
この写真は、聖アンデレ協会の農村図書館の蔵書です。 Like