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図書館の本分あるいはコアコンピタンス

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図書館…特に公共図書館の業界では、◯◯支援…が一種のはやりで、なんとなく先端のサービスのように見えるのだが…僕は少し「違うんじゃないかな感(違和感って言うのかな)」を持っている。
 ビジネス支援においては、すでに商工会や役所内の産業課などが経営相談にも乗ってくれるに起業へのアドバイスもある。企業の経営診断や会計/経理などのプロフェッショナルの方々もいらっしゃる。そうした人を差し置いて、図書館がビジネス支援をしなければいけない…とは、僕は思えないのだ。
最近では起業だけでなく、就職/就業支援などもビジネス支援として図書館でやるべきだ…論が出ているようだが、それこそハローワークの本分にまで図書館が浸食する必要はない。
 また、◯◯◯◯◯カフェなどの名称で、科学などをトークショーを図書館でやるべきだ…論も見受けられるが、「なぜサイエンスだけ?」という疑問も湧く。

 ビジネスにしろサイエンスにしろ、法律にしろ医療にしろ、それぞれの分野の専門家がいて、それぞれを本分とする機関が存在している。ならば、図書館がやみくもにそれらを浸食するのではなく、むしろ「図書館ならではの◯◯支援、◯◯カフェ」であって欲しい…と、思うのだ。

図書館の本分としては、
 図書を始めとした資料/情報/知識にアクセスできる環境
 司書をはじめとするそれらの資料/情報/知識提供のサポータ
であることではないだろうか。

 ビジネス支援ならば、「起業のためのノウハウ」を提供するのは商工会等、図書館は「起業のための情報収集の支援をすること」であり、就職/就業支援であれば「職を紹介する」のはハローワークの本分として、図書館は「就職/就業のための情報収集のサポート」に徹した方がよほどよいと思う。
 また、サイエンスに偏ることなく、むしろ0総記〜9文学までを取り揃えている図書館なのであるから、『NDCカフェ』として「今日のNDCカフェは 390 国防・軍事がテーマです」とか「519 エコがテーマです」とか、図書館の資料と関連づけた、NDCトークカフェを実施した方がよほどよいように思う。もちろんその中には、「440天文学です」とか「480動物のお話しです」とかサイエンスな内容があるのは良いと思う。

 というわけで、僕は◯◯支援にはちょっとばかり慎重で、むしろ『図書館の本分』あるいは『コアコンピタンス』として、何ができるのか…を重視した取組でありたい…と、考えている。そこには、[図書を含めた様々なメディアやコミュニケーション(通信という意味も含む)技術によって、その人が必要とする情報や知識にアクセスできることをサポートする]ことを本分とした軸足を置いた上で、ビジネスでもサイエンスでも法律でも医療でも[情報や知識の収集・整理・保存・利活用法など]を支援していけばいいのではないか..と、思っているのです。
しかも情報創造館は、アクセスに加えてクリエイティブのサポートもするのです。

 ちなみに、ALA(米国図書館協会)は、図書館員のコア・コンピタンスをこのようにまとめているようです。

 ・ALA、10年以上の議論の末にライブラリアンの「コア・コンピタンス」を定義 カレントアウェアネス・ポータル
 (1) 専門職の基礎
 (2) 情報リソース
 (3) 記録された知識・情報の組織化
 (4) テクノロジーに関する知識とスキル
 (5) レファレンスと利用者サービス
 (6) 調査(research)
 (7) 継続教育と生涯学習
 (8) 運営・管理
もちろん、ここまでできれば完璧なのですが、ビジネス支援やサイエンスコミュニケータなどを図書館に持ち込む場合も、それぞれの専門家の本分を浸食することなく、むしろ大原則として上記のコンピタンスに軸足を置き、リーチとしてNDCにある様々な分野/ジャンルを《話題》として提供する…僕は、そんなモデルをイメージしています。

Exciteブログは、はてブがつかないので….
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コメント

  1. 旅人 より:

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    こういうことがきちんと言える図書館の人ってあまりおられない様な気がします。
    図書館の本分が何かということがよくわかる話で安心できます。こういう図書館を利用できる人たちは幸せですね。いい図書館の傍で人生が送れたら最高だな。 Like

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    >旅人さん
    コメントありがとうございます。
    そんな風に書いていただけると、ちょっとコソバユイです。
    いつか旅の途中で山中湖にいらっしゃることがあったら、ぜひお立ち寄りくださいませ。
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  3. 旅人 より:

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    まぁ ひとつには図書館の人がモノを言わないってところに改革が遅れている原因もあるんではなかろうかって。モノを言うためには図書館関係のことに通じていなければいけない。本のことだけではなくネットワークであったりシステムだったり、こういうこともわからない人たちがいくらたくさんいてもこれからの図書館改革はできないでしょう。
    革新的というのはちょっと古いけど、でもやっぱり図書館にはまだ革新的という言葉が必要とされるほど古い古い体質が残っているんじゃないかな。
    だってちっとも変っていかないでしょ。
    ということで山中湖に行けるようにしたいもんです。
    いずれ 日本の公共図書館は丸山さんが言っているようなことをやらなければ存在自体が危うくなってくると思う、ちょっと早い図書館人なんですよね。
    丸山さんって。でもこれからの図書館が進むべき道にいつも明かりをともしてくれる人だと思います。
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  4. SECRET: 0
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    >旅子さん
    またまたありがとう。
    図書館の存在が、経済的に富めるものもそうでないものも、同じように知識に触れることができることを目的とするならば、このICT時代においてはパソコンを使いインターネットに接続できる環境を、誰にでも提供することって、とても大きな役目なんじゃないかって、思っています。ただ、正直なところ図書館がそれをしなければならない法的な理由づけはないんです。
    それでいながら、日本のブロードバンドやユビキタス社会がどうのこうのと言っている人たちは、「いつでも、どこでも、だれでも」情報を得られる時代…とかなんとか言ってますが、それは「パソコンや携帯電話が買えて、プロバイダーとか通信料とかを支払えるだけの経済力がある人」に限定されるということに気がつかなければいけません。僕はそういう意味で、山中湖情報創造館のマルチメディアコーナーと無線LAN環境を提供していたりするのです。 Like

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